前回までは「誇張せず書く」ということを伝えてきました。
誤解しないでくださいね。
それは、自分の生い立ちについて書く場合です。
今回は「嘘」に絡めたお話です。
嘘のかたまり
自分の生い立ちについて正直に書くということは、オーラをまとった文章を書けるようになるために、とても重要なことです。
しかし、
それ以外の部分では「たとえ嘘でも面白ければ悪くない」ということもあります。
例えば、
哲学の歴史に残る名著に「ツァラトゥストラはこう語った」という本があります。
ニーチェの代表作ですが、これは小説です。
ツァラトゥストラという架空の人物が、架空の世界を歩きながら、ニーチェの「超人思想」を説いていくわけです。
ニーチェが小説という形式を取ったのは、「普通に説明するより、そっちの方が伝わる」と思ったからでしょう。
小説は、見方を変えれば「嘘のかたまり」です。
しかも活字のかたまりでしかありません。
食べ物などと違い、実際に人間が生きることに、直接プラスになるものではありません。
しかし、そんな何の役にも立たない「嘘のかたまり」が、しばしば人の心を動かし、歴史すら変えてしまうわけです。
アメリカの「奴隷解放」も「嘘」から生まれた
例えば、
アメリカの奴隷解放のきっかけとなったとも言われる「アンクル・トムの小屋」という小説があります。
1851年に発表されたアメリカのストウ夫人の小説です。
小説なので事実ではないのですが、黒人奴隷のおかれた状況を愛情を持って描かれており、そのトムの人生を見て多くの人が涙し、「奴隷制をやめよう」という声をあげたのです。
これも「嘘」によって世界が変わった例と言えるでしょう。
この小説の前にも、多くの政治家などが奴隷解放を説いていたはずです。
彼らがたくさんの事実をレポートしたり、奴隷解放後の制度について発表したりしたことでしょう。
しかし、結果的に多くの人々を動かしたのは、一冊の「面白い嘘」の方だったのです。
しかし、「嘘でも面白ければいい」ということは、もはや、世界を変えてしまう程の事実なのだ、ということは分かってもらえたと思います。